きれいでいたい、おしゃれをしたい、という思いは、誰もが持ちつづける願いではないでしょうか?施設で暮らすお年寄りは、美容師のサービスを受ける機会がほとんどありません。ボランティアの散髪技術者見習いの方たちが、新聞紙をひき、廊下の片隅で散髪を行い、洗髪さえしてあげられないというのが、ほとんどの高齢者施設の現状です。それならばこちらから出かけて、一般的に健康な人が受けている当たり前のサービスを、外出できない老人の方、病気の方にも提供したいと思い、始めたのが移動理美容車さんきちです。
車輌には、シャンプー台、紫外線消毒機、熱処理消毒機、ドライヤーなどといった、普通の床屋さんと変わりない設備を搭載しています。
ただ違うのは、
車椅子用リフトがついていること、特別注文のフルリクライニング機能+水平高さ調節機能付きの車椅子を使用しての散髪ですので、寝たきりの方でも楽々と椅子に座っていただけます。
 
きっかけは、あるおばあさんを巻き込んだ交通事故を起こしたことでした。それからは、自責の念とともに、何か罪ほろぼしが出来ないかと思う毎日。そんな時にふと出会ったのが「移動理美容車」です。

TVで紹介されていたそれをみて「これだ!」と思いました。すぐさま、連絡をとり、移動理美容車の設計図やノウハウを教えてもらうことが出来ました。さんきち君1台にかかった費用は1,400万円!「自分のためにフェラーリを買うたと思えばいい」と思っての投資です。今でも、儲けよりはひとりでも多くの人のお役にたてることを第一に続けています。

 
さんきち号で施設を訪問すると、楽しみにしていたお年寄りが満面の笑みで一斉に集まってくれます。「今日はワシが一番に散髪してもらうんだ!」と早くから列をつくっている方もいらっしゃいます。

車椅子生活を送っているおばあちゃんが、きれいになった髪型を見せて歩くため、懸命にリハビリされるようになった、というお話もききました。

そんなエピソードと出会えることが、この仕事を始めて得た一番の宝だなあ、と思います。

 
1997年に始めてより、多くの方の喜びの顔、喜びの声をたくさん頂いてまいりました。理美容業というのは、単に髪型を美しく整えたり、清潔にしたりするだけではなく、心を癒すこともできる仕事だと思います。

これからも、スタッフ一同、皆さんの笑顔を糧に、心のケアができるような、そんな仕事を目指してがんばっていきたいと思います。